誕生、走るゾンビ!

リメイクされたドーン・オブ・ザ・デッド

ゾンビ映画の存在はロメロ監督によって広まり、現代までにその人気は長く知られています。日本にも導入されましたが、そのあまりに残虐なシーンは衝撃が強すぎるせいでオリジナルバージョンが見られないと嘆いた人もいたと思います。また90年代に入ると、今や日本の代表的なゲームともいえる『バイオハザードシリーズ』が発売されて大ヒットを記録した。ちなみにバイオハザード2のCMにはロメロ監督が参加しているなど、その時には既に『ロメロ監督=ゾンビ映画』という印象が固定化されていたのです。

監督が創りだしたゾンビ三部作と名付けられたゾンビや死霊のえじきは、90年代・00年代においても決して忘れることの出来ない作品として語り継がれている。そんな中で新たなゾンビ映画の制作が発表された。厳密に言うとリメイクになるのだが、映画ゾンビをリメイクして現代に蘇らせた作品『ドーン・オブ・ザ・デッド』の登場だ。

この作品により、それまでなかった新たな設定が盛り込まれた斬新な映画に生まれ変わったのです。

斬新すぎる世界

何が斬新かといえば、それまでゾンビといえば食べることもそうだが、二足歩行の際には決して走ることなくノロノロと歩いているだけだった。バイオハザードの初期作でもそうですが、数と人間の限界が伴わない強力な力で抑えこまれればたちまち逃げられなくなります。ただ動きが遅い分、単体での撃退も可能でしたがリメイクされたドーン・オブ・ザ・デッドにおいてそれらの常識が覆された。それは『走るゾンビ』の誕生だ。

この作品に登場するゾンビはとにかく走る、生前の人物が有していた脚力を持って生者を貪るために全速力で走るのです。死んでいるため疲れを知らず、無限に続く体力を持ってして追撃してくるため、逃げ切ることはこんなんだ。またそれまでのゾンビと違って戦闘能力も格段に上がっており、一度取っ組み合いとなれば組み敷かれて美味しくいただかれてしまうという絶望が待っている。

学習能力でもあるんじゃないかと、そう思わせるだけの存在感は今作においてそれまで固定観念化されたゾンビ概念そのものを覆した。そのためゾンビから逃げるシーンも見応えがあり、また必死で逃げる姿にもリアリティをもたせていることもあってそれまでにない作品となっている。

B級映画という位置づけながら

こう言ってはアレですが、ゾンビ映画はあまりメジャーな作品とはいえません。ですが今作での配役には過去、オスカーにノミネートされたことがあるようなキャストで構成されているのも、今作がそれだけ力を入れている事になる。その甲斐あって世界で見た作品の評価され、興行収入も世界レベルで100億円を突破した。日本でも映画公開されましたが、あまりにグロテスクな表現が強すぎるせいで、公開に際しては特定の年齢以上でないと鑑賞することが出来ませんでした。当時こうした作品にはあまり耐性がなかったため見たことはなかったが、後ほど見た時に思ったのはこんなゾンビいたら世界の終焉まで一直線だなぁと思ったものです。

あっさり過ぎるほど死んでいく

オリジナルのゾンビでは登場人物となる人々は後半になるにつれて死んでいきますが、今作では最初からバッサりと殺されて蘇り、ゾンビ化して人を襲っている。その流れはあまりに綺麗すぎると感じるほど、また新たに生存者が確認されても状況によっては長生きすることなく殺され、ゾンビと化してしまうケースもあれば、仲間に殺害されてしまったりと人の生き死にがあまりに短命すぎるという点が感じられる。それだけゾンビの前で人間など無力すぎると表現したかったのかも知れないが、あまりに簡単すぎるくらいに死んでしまうから、センセーショナルになる暇もありません。

まさにバッドエンディング

オリジナルのゾンビも大概バットエンディングだった、草稿段階でヒロインがローターで自殺を図るという時点でかなり来ている。一方で、ドーン・オブ・ザ・デッドにおいてのエンディングは、噂されている安全が保証された場所を目指して立てこもっていたショッピングモールを脱出するも、生存者はその道中で半分以下にまで減ってしまい、最終的に船に乗れたのはほんの数名だった。

犠牲者の上で出来上がった生存者たちがやっとの思いで辿り着いた島で待っていたのは、大量のゾンビたちによる出迎えだったのです。残されたカメラに記録されていたのは、雪崩れ込むように走ってくるゾンビから逃げる・応戦する声だけが響いてくるだけだった。結末がどうなったのかは想像に任されるが、絶望的なエンディングしかないだろう。

犬の存在

今作を見た人なら分かると思いますが、あらゆる意味でゾンビを招く存在になってしまったのが、生存者が発見したとある一匹の犬の存在だ。チップスと名付けられたボーダーコリーの犬がマスコットキャラくとして活躍をする。けれどその活躍というのがいい意味ではなく、ゾンビ達を招き寄せるという疫病神的な役割だ。最後に到着した島でも叫び声でゾンビを呼び寄せてしまい、死を覚悟して辿り着いた島で最大のピンチに主人公たちを見ましてしまったのです。

誰もが思うだろう、一番の悪者はこの犬ではないかと。動物好きな筆者も、これは流石にないだろうと思ったほどだ。

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