崩壊した世界といえば、こちらの作品

希望もない、あるのは絶望だけの『ゾンビ』

スノーピアサーでは文明崩壊後の、列車という矮小な社会構図となった中で繰り広げられる人間同士の争いや立場的な差、そしてそれを構築するためには何が必要なのか、といった社会の縮図が記されているように見える。最終的にそれら全てを破壊することで、元ある形に戻して秩序を取り戻して希望へと繋げることで幕引きとなった。その後を想像すればハッピーにもなれば、バットにもなるでしょうが、その点は想像にお任せと言えるでしょう。

最後はまだ希望に溢れているから良いとしてもだ、文明崩壊した世界において秩序云々などと人の理性が働く世界でまともに生きていることの方が難しくなる。それもそうだろう、何せ自分以外の人間が敵だったり、または異分子だったりするならそこかしこに敵がいることになる。安住の地を求めても何処に行けばいいかも分からない、けれどまだ見ぬ新天地ではきっと希望が待っていると信じて疑わないが、最後に待っていたのは絶望だけだったという結末に至る話も少なくない。夢も希望もない、あるのは絶望と死を呼ぶ慟哭だけというのが、個人的に抱いている文明崩壊後の世界をテーマにした作品だろうと考えている。

中でもこれぞまさに文明崩壊した作品といえばの代名詞である『ゾンビ』について見てみよう。

まさに代表作

ゾンビといえば、その名の通り当時作品が公開されてロメロ監督が一躍世界的な著名監督としてその地位を樹立することになった作品だ。今更ストーリーを紹介する必要もないので話を進めると、まさに文明崩壊した後の生き残った人々が、何とか生を掴みとろうとする姿が印象的です。この作品を見てしまうと、まだどこぞの世紀末で『ヒャッハー!!』といっているモヒカンヘッドのチンピラが可愛く思えていきます。何せ彼らが例え立ち向かっても、ゾンビの世界ではたちまち捕食された後に自身もゾンビ化してしまうのだ。それを考えただけでも恐ろしいだろう。

死んでいるのに生きているかのように動きまわる、自分がそうなると考えただけで鳥肌ものだ。けれど殺そうとしても殺せない、そもそも殺す手段があるのかという疑問さえ出てきてもおかしくない話です。一人、また一人と生者が貪られていく中で数少ない生き残りとなった人々は脱出を決意する。

その後の展開もまたカオスでしたが、一時期は平和が訪れた。この作品の砦ともいえる場所であるショッピングモール、そこにはゾンビで溢れかえってこそいたが物資は手付かずで残されていたのです。内部に巣食っていたゾンビたちを駆逐し、最上階にある隠れ部屋にて物資を運んでの立てこもりを行うことで安穏とした時間を過ごすことになります。

結末は酷いもの

しかし立てこもっての生活でも数少ない生き残りが死亡し、仮初の日常を取り戻していた彼らの前に突如として起こったのは生者による略奪だった。ヘルズエンジェルス達による襲撃、更には音の衝撃で現れたゾンビの大群によってモール内はカオスとなる。その後主人公たちは隠し部屋で撹乱の折にはぐれた仲間が戻ってくるのを待っていましたが、ゾンビとなった変わり果てた姿で戻ってきたのです、仲間を引き連れて。

主人公はゾンビになってしまった仲間の頭部を打ち、残り少ない燃料しか残っていないヘリに乗ってヒロインとともに夜明けの空へと飛びだって行く、これで物語は完結します。最終的にどうなるかは予想できるが、実は草稿の段階ではこれ以上に最も酷いエンディングが考えられていたという。

是非もなし

そのエンディングとは、最後の仲間がゾンビと成り果てたことで主人公とヒロインはもはや絶望しかなかった。主人公は自身の頭に拳銃を突きつけて脳天をぶち抜き、そしてヒロインはヘリのローター部分へと頭を突っ込んで自殺するというものが当初考えられていたのです。頭が粉々に吹き飛んだ彼女の身体はまだ捕食できるため、朝焼けが差し込む中でフランの死体を周囲のゾンビたちが貪りながらエンドクレジットが流れるという。この時点で最初からヘリコプターには余力となる燃料が残されていない事を示唆する表現があったからこその展開なのかもしれませんが、それにしてはバイオレンス過ぎる。

実際に公開されたエンディングでは絶望が待っているのか、それとも希望に満ちた明日があるのか、どちらとも予想できる終わり方となっているのでまだ良いでしょう。ですが草稿段階の内容がそのまま利用されていたらと思うと、それはそれである意味歴史に残る作品となっていたかもしれません。

どのみち待っているのは

ただどう考えても希望というものが極小でしかないのは見ていれば分かるはずだ。それでもすがるように、ショッピングモールでの手に入れた安穏とした仮の日常でも人らしく生活出来たことが、主人公たちにとっては救いだったのかもしれません。ゾンビ映画の起源を創りだし、文明崩壊した世界で繰り広げられる血と恐怖、そして食への渇望と何処までいっても果てのない絶望が表現されている。スノーピアサーなどと比較にもならない、これぞ究極的なバットエンディング一直線の映画と言えるはずだ。

文明崩壊した後の世界を描いた映画特集